第1回は

第2回は

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働き改革の「スター」を生み出せ

三浦第3回では「企業が『働き方3.0』を実現するには?」をテーマに意見を聞いてみましょう。北野さんは「アジェンダセット」と「ミニマムスタート」「スターを生み出す」の3つが必要だと述べています。

北野働き方もそうですが、そもそも慣習を変えるには方法論があると思っていて、最近はこの3つのプロセスが、その方法論だと思っています。

____P1A4752北野 唯我/著述家、ワンキャリア・オープンワーク 最高戦略責任者 執行役員

経営も現場も議論できるようなアジェンダで、できることからやっていくと。そして最も重要なのは、スター企業によって実際に働き方が変わった事例を取り上げていくことです。

そもそも、働き方改革に大きく成功した企業はどこかと聞かれたとき、イメージする企業が人によって違うところが、働き方改革の議論がブレている原因とも言えます。

三浦面白いですね。例えば「昭和のモーレツ企業」といえば、トヨタやリクルートがイメージされます。でも「働き方改革によって伸びた」という企業は、パッと思いつかない。そうしたスターをもっと出さなければならないと。

北野スターは個人でもいいし、チームや会社でも問題ありません。働き方改革で成功した企業はどこかを議論することのほうが、働き方改革の中身を議論するよりも重要なフェーズに入ってきていると思います。

三浦ちなみに北野さんが見る、働き方改革が成功した企業はありますか。

北野2社あります。1社は、働き方改革を「生き方改革」にした、カゴメ。もう1社は、シニアの改革に成功したパソナ。ほかには、R45採用や第4新卒(いずれも40代の社員の採用活動)を行っている企業も当てはまります。

三浦そういった企業がより注目を浴びたり、事例として分析されたりすることが必要かもしれないですね。

____P1A4968

北野以前、小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンさんと話したとき、「マクロの視点で見れば、新卒よりもシニアの生産性、働きがいを改善する方が重要」という言葉を聞きました。

三浦そちらのほうが市場も大きいですからね。

北野ええ。それに「若手は何度もチャンスがある」と。なので、実は日本全体の働き方改革でいえば、パソナのシニア採用などで中高年のチャンスを作る方が重要だと考えます。

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なぜ、会社がうまくいかないのか「診断」する

三浦沢木さんは「働き方3.0」を実現するには、「診断」「処方」「投薬」が重要だとしています。

沢木会社の状態が良くないときは、エンゲージメントが上がらない、急に社員が辞めてしまうといった、何らかの症状が出ているはずです。ですから、それがなぜ起きているのかという医療行為のような診断が必要です。

もちろん、診断なしで解決できる場合も稀にあります。例えば咳が出るから風邪だと判断して、ドラッグストアで風邪薬を買って治してしまうように自、分たちで問題を解決してしまう会社もあります。

____P1A4747沢木 恵太/株式会社おかん 代表取締役 CEO

しかし、ほとんどの会社は、症状の原因を診断してもらわなければわかりません。診断を受けて初めて、処方・投薬という対策ができるはずです。

例えばマネジメント層が、メンバーのモチベーションの源泉は何なのかをしっかりと把握しているかどうか。それを理解していなければ、どんな施策を打っても無駄に終わる可能性があります。

「1on1(上司と部下が1対1で行う対話)」の手法も、業務の確認ではなく、相手が何を大事にしているのか、何をやりたいのかを把握するための方法です。もしもチームのメンバーの価値観をイメージできないのであれば、まずそこから理解すべきで、それが診断の第一歩なのではないかと思います。

三浦組織や人事をコンサルティングする外部の視点は、やはり必要ですか。

沢木そうですね。毎日顔を合わせていると本音が出せず、客観視をしなければわからないこともあります。そうした点は、ツールを活用したり、コンサルタントのような第三者を介入させたりして見えてくることもあるのです。

個人的には、メンバーの“ワークライフバリュー”は何かと答えられなければ、マネージャーは失格だと思います。個人の価値観を知っていくうちに、徐々にチームの傾向もつかめるはずですから、まずメンバーの考えを把握すべきです。

三浦個人の“ワークライフバリュー”の理解を通じて、組織の“ワークライフバリュー”が高まると。

____P1A4872三浦崇宏/The Breakthrough Company GO 代表取締役
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上司とは「気が合わない」前提で考える

三浦麻野さんは「働き方3.0」を実現するには、「経営のモデルチェンジ」が必要だという考えです。

麻野自分と他人は違うと誰もが認識することが、非常に大事だと考えています。“ワークライフバリュー”が実現しないのも、どこかで自分と他人は同じと思っているところに原因がありそうです。特に日本人は、言語も民族も同じですから、そう思う傾向が強い。

しかし、誰もが自分と同じ体力、同じモチベーション、同じ環境で働いているわけではありません。だから多様な価値観を認識しなければならない。

以前に講演した際に、「どうしても気の合わない上司がいます。どうすればいいですか?」という質問を受け、「前提を変えてほしい」と答えたことがあります。

その質問の前提は、「世の中には自分と気の合う上司がいる」ということだったと思いますが、実際のところ気の合う上司なんていないものです。気の合う同僚さえ、存在としては稀です。

____P1A4825麻野耕司/モチベーションエンジニア、株式会社リンクアンドモチベーション取締役

価値観や気が合うと考えているから、「何であの人、こんなことをするんだろう」「こういう仕事をするんだろう」と、ストレスが溜まってしまう。

上司も同僚も自分で選べませんから、気の合う方が奇跡です。気の合う人はいないという前提に立てば、「意外とこういうとこは気が合うな」「価値観は合わないけれど、どうやって乗り越えればいいか」と建設的に考えるようになり、職場の雰囲気も変わると思います。

そういった姿勢がなければ、“ワークライフバリュー”を追求したところで職場はバラバラになります。

三浦面白いですね。わかり合えないことを大前提にわかり合おうとしていくことがいい組織を生むと。

昔、歌手の小沢健二がフリッパーズ・ギター時代の「すべての言葉はさよなら」という曲で、「分かりあえやしないってことだけを分かりあうのさ」と歌っていました。

当時は何を言っているのかわかりませんでしたが、麻野さんの言ったことを歌っていたんですね。「オザケンは組織論を歌っていた」と、今になって腑に落ちました。

____P1A4909

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ランチや1on1で価値観の共有を

三浦最後に「あなたが考える働き方改革3.0」について、意見を聞いていきましょう。今度は麻野さんからお願いします。「組織のあり方改革」という答えですが、どういうことでしょうか。

麻野個人の働き方改革というと、個人が自由な場所、自由な時間で働くという形が多かったと思います。それはもちろん大事ですが、その上で個人同士がどうやって繋がっていくかを、働き方改革3.0ではアジェンダに入れるべきということです。

突き詰めると、働く場所や時間だけでなく、生活も含めて、それぞれ異なる個人をどう繋げていくのかを議論していければいいですね。

三浦北野さんは「『自分の名前で生きていける人』を増やす」という答えですね。

北野自分の名前で生きていける従業員の割合を最大化させることが、組織戦略のあるべき姿だと私は考えています。

組織戦略は結局、個人と組織がWin-Winになる関係を探すことで、時代によって変わります。

____P1A4681

高度経済成長期は年功序列型が双方にとって利益があったけれど、今の時代は会社が明日潰れたとしても生きていけるような人材を育て、それを応援していく形が最も望ましい。

トヨタ自動車の豊田章男社長も、終身雇用は難しいと明言し、「トヨタの看板が無くても、外で勝負できるプロを目指してほしい。どこでも闘える実力を付けた従業員が、それでもトヨタで働きたいと、心から思ってもらえる環境を作りあげていく」という趣旨のことを語っています。

それは、まさに従業員が自分の名前で生きていけるようにするということだと感じました。

三浦なるほど。沢木さんは「『一律』ではなく『多様的』」とのことですが、どういうことでしょうか。

沢木働き方改革が生まれた背景には、高齢化が進み労働力人口が減り続けている現実があります。生産性を上げる、働き続けられるように最適な環境を目指すのであれば、働き続けられない理由を考えることも必要です。

それは、モチベーションの場合もあれば、モチベーション以外の場合もあります。これらの課題を解決するため、企業が適切な投資をすることが求められている。

一方、今後は外国人労働者も増えていきます。価値観のズレは今よりもさらに大きくなりますから、互いの価値観を理解して企業が対策することは当たり前になっていくはずです。

しかし多様性を重視することで、従業員のニーズをすべて受け止めて、それぞれ対応しなければいけないのかという問題も出てきます。

____P1A4790

三浦それは、現実的ではないですよね。

沢木なので、この会社はこういう価値観を大切にするんだと、初めから明確にして発信した方が問題も少なくなるのではないでしょうか。

そうした上で、様々な企業の持つ多様性も認めるべきで、一律同じルールに押し込めるのは働き方改革として適切ではありません。

三浦今回のパネルディスカッションで、「働き方3.0」への意識もかなり高まったと思いますので、明日からのファーストステップに向けて一言ずつ、まず麻野さんからお願いします。

麻野明日、職場で最も合わない人とランチに行くことからはじめてもらいたいですね。

____P1A4955

三浦何が違って、何が同じかを確かめ合うところからスタートしようと。

麻野価値観の違いを乗り越えることから、始めてみるのもいいのではないかと思います。

北野私は、仕事の話をせずに価値観の話をするという「1on1」を、30分間行ってみることを勧めます。「普段はどうしてるの?」といった話を聞くことも、非常に意味があるはずです。

沢木私も「1on1」がおすすめですね。そこで「あなたは働き続ける上で、必要不可欠なことは何ですか?」と、ストレートに問いかけるのが、最もわかりやすいかなと。

意外とタブーとされている部分ですが、知っていた方が仕事は必ずやりやすくなりますから、「1on1」をやるのであれば、ぜひ試してほしいですね。

*本記事は、2019年8月7日に開催されたNewsPicksアカデミアのイベント「働き方3.0」を編集したものです。イベントの全編は、より視聴可能です。