第1回は

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職場との「出会い方・別れ方」も改革を

三浦“ワークライフバリュー”という考え方をベースにした働き方改革を成功させるには、何が重要になってくるか。それぞれ3人に聞いてみたいと思います。

北野今の働き方改革は、在職期間中の問題がメインに見られがちですが、本来であれば職場との「出会い方と別れ方」も重要なはずです。離職の原因も、入社する前に抱いていた期待値と実際に入ってみてからの現実に、ギャップが生じることだったりします。

そして、ギャップを引き起こしているのは、企業が採用活動で「うちの会社はホワイト企業」「給料も高い」「20代が成長できる環境にある」といった、耳当たりのいいことばかり話しても成り立ってしまう構造があるからだと思います。

それに加え、もう1つすべきことは、「別れ方改革」です。

____P1A4889北野 唯我/著述家、ワンキャリア・オープンワーク 最高戦略責任者 執行役員

三浦企業と個人の別れ方ですか?

北野そうです。今は社員が退社して新しい挑戦をするときに、「お前、この会社でダメだったらどこ行ってもダメだよ」と言いがちだったりします。

三浦ええ、そのように言ってくる人はいますよね。

北野「お前、それは裏切りだよ」といった言葉が、どれほど人の可能性や意欲を奪っているかと。私は非常に憤りを感じています。

三浦退職する人への「呪い」とも言えますからね。

北野私も経営をしている立場なので、退職者に向き合うと、何か言いたくなる気持ちもわかりますが、そこで「新しいチャレンジを応援するよ」と言えば、相手のその後のキャリアは大きく変わっていくはずです。それに、アラムナイ(卒業生)ネットワークとして、回り回って自社にも利益をもたらすことが多い。

私は、このような日本の悪しき習慣を破壊したいと思っていて、そこから生まれたのが、著書の『』です。

フェアでクリーンな出会い方と別れ方を整えた上で、社員から「いつでも転職できるけど、それでも今の会社を選ぶ」と思われるのが最強の会社です。そんな会社をつくるためには、出会い方と別れ方も改革しなければなりません。本来は、人材流動性は適切な値でキープしていたほうが健全ですから。

三浦男女の別れ方でも、いい別れ方ができる男こそ一番カッコイイですからね。

恋愛がそうであるように、転職も本来はフラットなはず。それにも関わらず、あたかも企業側に圧倒的な決定権があるような状態は、モラルとしても良くないですし、もったいないことでもあります。

____P1A4875三浦崇宏/The Breakthrough Company GO 代表取締役

北野実は現在行われている一括採用にも、就労意欲を著しく奪う、大きなデメリットがあります。

三浦一括採用が就業意欲を奪う?

北野はい。今の就職活動は、3月から解禁されます。そして、6月から本格的なスタートとなり、数カ月間で学生は平均30社ほどの選考を受けます。

しかし、内定をもらえるのは多くても2社や3社。裏を返すと、非常に短い間に20数回は「お前はいらない」と言われる。

何度も「お前はいらない」と言われた後でやっと採用されても、精神的には落ち込みます。その状態で「仕事を楽しんで」と言われてもギャップがある。数カ月の間で、学生に圧倒的な挫折感を与えてしまう現在のやり方は、「出会い方改革」における課題といえます。

____P1A4760

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企業の「性格」を明確にする必要性

三浦沢木さんは、「企業の性格を明確にする」ことが成功の鍵となるという回答です。詳しく聞かせてください。

沢木「働くうえで何を重視するか」という価値観は、個人だけではなく法人にもあると考えています。

麻野さんがよく話される「組織人格」という言葉があるように、法人にも個人のように性格があり、重んじる価値観も各企業で違います。しかし、自分の会社がどんな性格なのかを、そこで働く社員が意外と理解していないことがある。

____P1A4921沢木 恵太/株式会社おかん 代表取締役 CEO

例えば、ある個人が「家族との時間を重視する」という価値観を持っていても、家族との時間があまり重んじられない価値観の企業に入社してしまえば、いつか離職してしまいます。

企業も、価値観や性格を明確にすることが必要です。

三浦広告会社を例にすると、電通と博報堂は比べられることも多いですが、企業のカラーはまったく違います。同じ業態で同じような業務でも、電通にしか受からない人材と博報堂にしか受からない人材がいます。

性格でいえば電通は「パワー系」でメディアに強く、博報堂は「小回り知恵系」でマーケティングに強かったりします。組織人格がハッキリしていると、ミスマッチも少なくなりそうですね。

最後の麻野さんは、たった一言。「モチベーションクラウド」(リンクアンドモチベーションの組織改善クラウドサービス)が必要だと(笑)。

____P1A4713麻野耕司/モチベーションエンジニア、株式会社リンクアンドモチベーション取締役

麻野前提としてモチベーションとともに、それ以外の要因も重要だと考えていて、その両輪で改革を進めていく必要があります。

私は年に1~2回、視察でアメリカを訪れますが、数年前には “エンゲージメント”が必要という議論が出ていたところ、現在は “ウェルビーイング”という考え方が話題になっています。

三浦アメリカでは、“エンゲージメント”から“ウェルビーイング”へと考え方が移っていると。

麻野そうですね。日本は“エンゲージメント”でもアメリカに比べると遅れていますが、“ウェルビーイング”の取り組みも同時並行で進めていく必要がありそうです。

その上で、“ワークライフバリュー”という考えも実現させていかないといけません。一社一社、一つひとつの職場で、“ワークライフバリュー”を尊重できる状態が必要なのかなと。しかも経営陣だけでなく、社員全員で捉え直すことが大事だと感じました。

ビジネスは絶えず変化しています。戦後復興期にビジネスの源泉になったのは「業界」でした。国が護送船団方式で「鉄鋼を伸ばす、繊維を伸ばす」と決め、その業界が成長していきました。

高度経済成長時代には、ビジネスの源泉は「会社」に移ります。資金が潤沢で大規模な工場をつくれる製造業の会社が伸びた時代なので、個人の力では戦えませんでした。

一方、現代はソフトビジネスが中心。そうなると個人の力がより重要になってきます。個を中心とした組織創り、職場創りをやらなければなりません。

もちろん、それでも完全に「個人」に振ることはできません。職場が忙しいなかで、1人だけ早く帰ろうとすると、どこか申し訳なさを感じてしまう人も多いと思います。

____P1A4961

三浦それはありますよね。

麻野周りも「あいつ、忙しいのに早く帰って」と感じてしまう。しかし、その意識を変えなければ、“ワークライフバリュー”は実現しません。

三浦会社の組織人格は経営者によって決まりがちですが、麻野さんの話を聞いていると、部署やチームでもそれぞれ組織人格をつくらないといけない気がしてきました。

麻野部署やチームごとに組織人格を創りつつ、個人の人格も尊重できればいいですね。

三浦沢木さんは部署ごとやチームごとで、人格を意識していることはありますか。

沢木組織の人格は、仕事の内容やビジネスモデルで変わったりします。同じ社内でも、ルーティンワークをこなす部署とクリエイティビティを発揮する部署では、それぞれ組織の性格は異なるものです。

私たちは今、「ハイジ」というビジネスでモチベーション以外の要素を測定していますが、業界ごとでも性格の違いがあったりします。製造業とITでは傾向は違いますし、同じ製造業のなかでも営業部と製造部では異なります。

ただ、組織人格は経営者の影響を受けてはいけないと最近は考えるようになってきました。

経営者個人の人格とその企業の組織人格を一致させていけばいくほど、個人はどんどん埋没をしていきます。個人を尊重するにあたって、これからは経営者個人と企業の人格を切り離した経営が求められていくはずです。

第3回は

*本記事は、2019年8月7日に開催されたNewsPicksアカデミアのイベント「働き方3.0」を編集したものです。イベントの全編は、より視聴可能です。