第1回は

第2回は

1/3

無人コンビニや24時間営業問題にどう向き合うか

――これからは質疑応答に入りたいと思います。はじめに、Amazon Goのような無人のコンビニエンスストアについて、どのように考えているか聞かせてください。

澤田 実際に米国でAmazon Goを視察したところ、最新のテクノロジーが駆使されていて、正直に言って脅威だと感じました。

ただ、脅威だからと言って怖がっていても仕方ありません。私たちは地域のことをよくわかっていて、お客さまに対して丁寧に接することができます。そこに、パナソニックさんやGoogleさんとの連携等からテクノロジーを掛け合わせていくことを目指していきたいと考えています。

テクノロジーで生産性を上げるとともに、地域に異常に密着してコミュニケーションを強化していく。そんなハイブリッドなコンビニをつくっていきたいという思いです。

――今後は24時間営業を維持するために、自動化していくことも考えられます。昨今問題になっている24時間営業については、どう考えていますか。

澤田 夜中にどんな商品が売れるかという実験をしたところ、たばこやお酒、おつまみなどがほとんどでした。将来的には顔認証などの様々な技術の進化によって、無人化は可能だと考えています。

例えばセンサーを設置して顔認証でドアが開き、店内で商品をピックアップして、出るときも顔認証によってドアが開く。パナソニックさんとも、まずはそういったオペレーション面に絞ってテクノロジーの実用化をしていきたいと話し合っています。

労働力不足の解消についても、まだ遅れている部分もありますが、テクノロジーを駆使して対応していきたいと考えています。

ただ、夜中に店舗を閉めると売上が落ちるのも事実です。ある地域で1店舗(A店)は深夜営業をやめて、少し離れたもう1店舗(B店)では24時間営業を続けたところ、お客さまは、少し離れたファミリーマートB店に行くのではなく、残念ながらA店から一番近い別のチェーン店に行ってしまいます。

現状は一律で営業時間を決めるのではなく、深夜営業をやめることで収益とコストがどれほど変化するかを細かく分析し、1店舗ずつ丁寧に店づくりをしていくしかないと考えています。

___190612-0037_DxOFP澤田貴司/ファミリーマート代表取締役社長

――セブン&アイ・ホールディングスの鈴木(敏文)名誉顧問による現場主義に感動されて小売業に興味を持たれたわけですが、セブン&アイ・ホールディングスに対して勝算はありますか。

澤田 勝算というか、他社がどうこうではなく、私が目指すのは、ファミリーマートの加盟店にファミリーマートのことが好きだと思ってもらうこと、「これからもファミリーマートと一緒にやっていこう」と言ってもらうことです。

CVS業界全体に言えることだと思いますが、店舗数という規模の追求が過熱していった結果、市場の飽和状態が生まれました。それによって、労働力不足や、加盟店間の競争も激しくなりました。したがって、これからは加盟店と一緒になって、支持率ナンバーワンを目指していこうと。そういったチェーンをつくることが、私のゴールだと考えています。

――セブンイレブンを意識し過ぎないということですか。

澤田 セブン&アイ・ホールディングスは非常に立派な企業ですから、当然これからも研究はしていきます。ただ、店舗数で競争するつもりは全くありません。

2/3

店舗やスタッフは地域密着、本社は専門人材

――会場の方からの質問も受けたいと思います。

質問者1 人材育成について、どのようにお考えなのか教えてください。

澤田 私は過去のコンビニエンスストア経営は、大量出店、大量採用、地域異動を繰り返してきたと思っています。しかし、日商平均が全国を大きく上回る沖縄県では、それらが一切ありませんでした。

とはいえ、沖縄の店舗を巡回するスーパーバイザーが何か特別なことをやっているかと言えば、ほかの地域とそこまで変わりません。一番大事なのは、加盟店と信頼関係を築いて、加盟店の立場に立って仕事をすることです。そして、そこの地域について異常なくらい理解を深め、一緒に商売をする。これこそが原理原則になります。

極端なことを言えば、販売業は地元に密着するべきで、社員を大量採用して会社都合で全国を転勤させるような時代はとっくに終わりを告げています。地域に根差した社員をいかに育成してくかということも今後の重要な経営課題だと認識しています。

一方、本社で採用するのは、マーケティングやITなどの専門的な知識を持っている人材です。今後はチェーン全体にかかわるシステムや専門分野の仕事は本社、各店舗における販売は地域密着で行うような分業化が理想だと、個人的には思っています。

質問者2 地域密着というキーワードを掲げる企業も多いなか、顧客に来店し続けてもらうため、どのようなことが大切になってくるのでしょうか。

澤田 一番は、顧客のことをより深く知ることです。うまく回っている店舗は、お客さまが入店した際、「タナカさーん!」というあいさつの声掛けがあったりします。「タナカさん、今日も元気そうですね?」とか。

地方に行けば行くほど、そういった密接なコミュニケーションが多く、そして店舗が地域から支持されているのを感じます。私としては、全国のファミリーマートをすべてそういった店舗にしていきたいです。

都会でも考え方は同じです。例えばオフィスビルに入っている店舗なら、そのビルで働く方々に愛される店舗にしたい。そのためには、やはり顧客をよく知ることです。

そのビルには何社が入居して、何人が働いているのか。各社の創業日、社長の名前や誕生日まで調べてみる。相手を“異常な”くらい知って、“異常な”くらいに尽くすことです。

それを1店舗ずつ丁寧にやっていくしか、道はないはずです。

___190612-0052_DxOFP

質問者2 相手と向き合う気持ちを、社員にはどのようなメッセージで伝えるのでしょうか。

澤田 おそらく私が「20万人ものスタッフに伝えられない」、あるいは「組織が大きくなりすぎてできない」と言い訳した瞬間、すべてが終わってしまうはずです。 なので、まず言い訳をしないこと。そして、自分自身が最も努力しなければいけないと考えています。

私が最も激しく、「何でこんなことを加盟店にやらせているんだ」と言わなければいけない立場であり、その思いをさまざまな方法で社員に伝えていく必要があります。

最近は「本部社員が一番現場のことをわかっていない」と言い過ぎたことで、社員からの反発もないわけではありませんが、それでも構わずにとにかく思いを伝えていっています。

加盟店とお客さまが大事で、そして一緒に地域貢献しようと。

店舗を回ったり、映像で伝えたりと、あらゆる方法を駆使して思いを伝え続けるようにしていますが、もしも私が立ち止まったら、そこで終わってしまうはず。ガス欠を起こしたら、そのときは社長をやめなければいけないと考えています。

3/3

ロールモデルには手紙を書き、会いに行く

質問者3 伊藤忠に在籍していた時代、セブン&アイ・ホールディングス(現在)の鈴木(敏文)名誉顧問の働く姿に影響を受けたとのことで、若いビジネスパーソンが経営者レベルまで目線を上げるために大事なことは何だと考えていますか。

澤田 目の前の仕事を真剣にやることに尽きますね。

伊藤忠のときは、セブンイレブン再建の現場に出ることができ、驚きばかりでした。「鈴木さん、すごいな」と感動し、ユニクロ時代に代表取締役会長兼社長の柳井(正)さんと仕事をしたときも、常に先のことを考えて手を打ち続ける姿に、「自分もこうならなければいけない」と思ったものです。

ただ、先のことを思い描くだけではなく、目の前のことをがむしゃらにやってきたことも、また確かです。 「目の前のことを一生懸命やる。その繰り返し」というのは、答えとしては当たり前すぎるかもしれません。しかし、当時の私にはそれしか方法がなかったとも思います。そうしていくうちに目標が見えきて、一心不乱に走ったと。

質問者3 自分のロールモデルになるような人物に、人生のターニングポイントで会うことも大切だと感じます。自分から会いにいく、接触を持つことも重要になりますか。

澤田 それは本当に大切なことです。

私自身、伊藤忠時代には、「マクドナルドやセブンイレブンがうまくいっているのに、なぜ伊藤忠では流通業ができないのか」と考え、日本マクドナルドの創業者である藤田田さんに手紙を書いたりもしました。

実際にお会いすることもでき、「お前、面白いな」とも言ってもらえました。興味を持ったら会いに行くことは、よくやっていましたね。