前回は

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社長就任前に店舗でレジ打ち研修

澤田 2016年9月にファミリーマートの代表取締役社長に就任して以降、「未来志向」と「生産性向上」を軸に、「店舗オペレーション改革」「商品・マーケティング改革」「働き方改革」「社内体制整備」と、次々と改革を行ってきました。

まず「店舗オペレーション改革」です。一例として、店舗作業の省力化とお客様の利便性向上のために、次世代/セルフレジの導入などに取り組んできました。セルフレジは2017年に1000台、今年は4000台設置していく方針です。

また、私は社長に就任する前に3週間ほど、現場でレジ打ちなどを含む研修を受けたのですが、その時の経験からレジの「客層キー」を廃止しました。

レジ業務は非常に複雑で、収納代行メニューも多岐にわたります。さらに、「カードで支払います」「ポイントで支払います」と言われることもあります。ただでさえやることが多いのに、最後に年齢性別ボタンを押さなければいけません。

私も実際にレジに立ちましたが、混乱してしまい、お客さまが男性でも女性でも子どもであっても、考える暇もなく、とりあえず“男性50代”と同じボタンを押してました。

そこで、私のようなスタッフも多いのではないかと考えて、社長就任後に調査を実施してみました。すると、7割以上が私と一緒で同じボタンを押していたことがわかったのです。

社内には「客層キーがなければデータベースがなくなり、商品開発に生かせません」という反対意見もありましたが、ポイントカードのデータを活用すれば、データ分析は十分出来ると判断し、客層キーの廃止に踏み切りました。

___190612-0007_DxOFP澤田貴司/ファミリーマート代表取締役社長

要は、よく検証もせずに、過去からの習慣をやり続けていたということです。

こういうことは、客層キー以外にもきっとあると考え、社長就任直後からオペレーションの負荷については徹底して加盟店の皆さまから声を聞いています。これまで、3ヶ月に1度「店舗オペレーション業務削減」のアンケートを行っていますが、店舗の業務量が減ったという回答は、2017年度では7.4%だけでした。

そこから一気に改革をはじめ、2018年度の上半期は50.2%、同年度下半期は51.9%の店舗から業務量が減ったという評価をいただきました。まだまだ道半ばですが、現場の声が全てだというのが私の考えの基本です。

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商品のマーケティングを強化

次に「商品・マーケティング改革」です。現在、日本は少子高齢化の流れのなかで各市場はものすごい勢いで変化しています。食の市場を見ると、規模は2005年から2017年の間に67兆円から71兆円と、約105%の伸びを見せています。なかでも中食(なかしょく)の分野は、約135%増と伸長が著しくなっています。

中食は家庭外で調理された食品を購入して持ち帰ったり、配達などで家庭内で食べる形態であり、これらの方々こそがコンビニのターゲットです。中食は今後もますます増えると考え、さらに注力していこうと舵を切っています。

まず中食工場への設備強化として、約5年間で350億円規模の投資を行っています。例えばサークルKサンクスで支持の高かった炭火焼きとりを導入することで、発売からわずか6カ月で1億本販売を達成しました。

また、中華まんを製造してくださっている井村屋さんには、2017年に20億円という大きな投資をしていただき、本当においしい商品がをご提供いただいております。食感と香り、風味がそれぞれ向上したことで、日商は前年比120%アップしています。

さらに、商品の基本価値に話題性をプラスすることでお客さまの来店動機を上げるため、ファミチキをピックアップしてよりアピールしようと考えました。

ファミチキはデータを見ても、これまで最もコンスタントに売れてきた商品の一つです。それを、より世間に浸透させようと狙い、話題作りとしてファミチキを擬人化させて生まれたのが、ファミチキ先輩というキャラクターです。

ファミチキ先輩の認知率はモニター調査した結果、現在56.7%で、漫画の「NARUTO」や「進撃の巨人」と迫るような数字となっています。ファミチキ先輩の良かった点は、被り物のため、社員も加盟店も自分たちのキャラクターとして現場で楽しくアピールできたところも挙げられます。

「働き方改革」では、本社移転と身だしなみルールの変更、社内コミュニケーション改革に取り組んできました。

本社は、2019年2月に、池袋から田町に移転しました。旧・池袋本社は6フロアに分散していたことで、コミュニケーションの取り辛さがありましたが、新・田町本社はオフィスを3フロアに集約し、席もフリーアドレスにしたことで、コミュニケーションが大いに改善されました。

今までは暗黙の了解でダークスーツ着用だった身だしなみも、服装を自由化しました。その日の予定に合わせた服装を、自ら考えるという事が重要で、社員からも好評です。

また、書類のやりとりが中心だった社内コミュニケーションも、GoogleのグループウェアであるG Suiteを導入し、さらに社内SNSも開設することで、動画や写真を中心としたスピーディーで明瞭なコミュニケーションに変わりました。

Photo by i-Stock/winhorse Photo by i-Stock/winhorse

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目指すは「沖縄店舗型」

さらに加盟店の支援を強化するための「社内体制整備」にも取り組んでいます。

ファミリーマートは全国に約1万6500店舗がありますが、地域によって各店の客層や支持される商品は異なってきます。ナショナルチェーンである一方で、各地域に根差した店舗運営こそが、今後のコンビニの優劣を分けるといっても過言ではありません。

最もわかりやすい地域が沖縄県です。沖縄の平均日商は約65万円。全国平均の53万円と比べるとダントツに高い。これは、徹底して地域に密着した運営が支持されているということだと思うのです。

沖縄ファミリーマートの皆さんは、沖縄で生まれて、沖縄で育ち、そして今、そこで生活している。そういう人たちが沖縄の人たちのためにビジネスをしているので、地域に“異常に”密着しているわけです。

沖縄でよく売れる商品にフライドチキンがあり、そこから彼らはファミチキ先輩をまねて、自発的にフラチキ先輩というキャラクターを作ったりもしています。

地域のことを知っていて、地域に喜んでもらうことをやろうとしている。これをすべての地域でできればファミリーマートはハンパない!そのような体制を築いていかなければならないと思っています。

人事制度改革では「社員も家族のもとへ」ということで、400名以上の単身赴任者を、本拠地(生活の拠点として本人が会社に登録している住所)に帰任してもらいました。

そのベースにある考えは職住近接です。スーパーバイザーの中で最も移動距離が長い社員は、月間の移動距離が約5000キロにもなっていました。1日平均では約220キロで、タクシーの1日の上限走行距離270キロとあまり変わりません。さらにコンサルもやる。あり得ない事です。

そこで、スーパーバイザーが加盟店の近くに住み、移動距離を大幅に減らすことで本来業務である店舗のコンサルテーションに時間を使えるような体制づくりにも注力しています。

ファミリーマートとサークルKサンクスは2016年9月にブランド統合がスタートし、2018年11月までの2年3カ月で、対象となった5003店舗の転換が完了しました。

店舗数は、1位のセブンイレブンの2万店に続き、ファミリーマートが約1万6500店で2位となっています。しかしながら、規模の拡大によるスケールメリットを享受しながらも、一方でマーケットの飽和、人手不足、24時間営業の見直しなどの問題も出てきました。

これからは、各店舗の質の向上こそが最重要課題であると位置づけており、ブランド統合が完了してファミリーマートのワンブランドになった今年は、1400億円の総投資額のなか、約8割の1130億円を既存店投資へ注力することにしました。「One FamilyMart」として、看板だけでなく人も心もひとつになる真の統合を果たした今、ファミリーマートの新たな歴史を加盟店や取引先とともに築いていきたいと考えています。

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次世代コンビニや金融業も視野

また、「未来志向」として、パナソニックさんとともに次世代型コンビニエンスストア構築も目指しています。パナソニックさんに実際に加盟店として店舗を運営していただいており、当社からも人を出して、顔認証決済や、物体検知、店内POP・電子棚札化など、様々な実証実験を共同で展開しています。

まだスタートしたばかりのプロジェクトですが、パナソニックコネクティッドソリューションズの樋口(泰行)社長と月1度のトップミーティングを開き、議論を続けています。

デジタル戦略に関しては、一番重要視しているのはオープン化です。これからはお客さまの利便性を最優先に考えて、自社だけで囲いこむのではなく、オープンな立場で、様々な技術や得意分野を持つ企業と協業していく方針です。

スマホ決済も様々なサービスに順次対応予定のほか、自社デジタル基盤の確立を目指して、7月からはファミペイを導入します。ポイント連携や電子クーポン、バーコード決済を進めるほか、これからは自社IDを持つことで、様々なデータを取得した上で、ほかの事業に生かしていきたいと考えています。

特に注力すべきは金融事業で、貸付や保険、税金の分割払いなどのさまざまなサービスを検討中です。今後はファミペイを活用したビジネスの多様化を進めていきます。

デジタル化を加速させるもとはいえ一方で、日々、20万人のスタッフが1500万人ものお客さまをお迎えするリアル店舗を持っていることが、私たちの強みです。

デジタル化の時代だからこそ、人と人とのふれあいが強く求められます。今こそ、人と地域に寄り添えるような地域密着戦略を強烈に進めていきたいと思います。

第3回は