<前回は>

1/4

落合陽一はなにが「すごい」のか

今の日本で、「編集思考」をもっとも実践している人は誰でしょうか? そう質問されたら、私は「落合陽一さん」と答えます。

落合さんは、私がここ2年でもっとも影響を受けた人物です。

2017年の春に編集者として初めてインタビューした際「この人はこれからの時代を創っていく人だ」と直観しました。それ以来、落合さんをホストとしたニューズピックスの番組の配信、落合さん著の刊行など、数多くの仕事をご一緒しました(落合さんも私も、プライベートでべたべたと付き合うタイプではないため、仕事以外で会ったのは1回だけです)。

落合さんは、「つなげる」こと、かけ合わせることの名手です。

1つは「経済×テクノロジー×文化」のかけ算です。

あるときは筑波大学の研究者として学生を育てながらテクノロジーを深掘りし、あるときはスタートアップ企業の経営者として会社を切り盛りし、あるときはメディアアーティストとして創作に打ち込む。彼は、経営者と研究者とアーティストという3つの顔を持っています。

彼の得意なもう1つのかけ算は、「東洋×西洋」です。

東洋思想を言葉と身体で会得している彼は、安易な西洋万歳に陥ることなく、「東洋×西洋」のかけ合わせから言葉や作品を紡ぎ出します。西洋の核心を知った上で(彼は望めばいつでも海外の第一線で働けます)、日本らしいビジョンを描ける。

31歳にして私利私欲を超越していて、まるで浮き世ばなれした「モダンな仙人」みたいなのです。

大半の人が「経済」「テクノロジー」「文化」、あるいは「東洋」「西洋」のどれかに偏って、ゆがんだ未来を描くのに対して、彼はすべてのファクターを高次に編集しながら、頭だけでなく、身体を使って未来を表現しようとしています。

落合さんの例を出すと、「彼は天才であって、自分とはかけ離れた人。参考になりませんよ」と言う人も多いですが、それはあまりにもったいない考え方です。落合さん自身も「自分は天才ではない」と言っていますし、実はとてつもない努力の人です。

落合さんに学ぶことで、落合さん的なものを自分の中に取り込むことは決して不可能ではありません(私自身も、2年間、落合さんに触れ続けたことで、自らの編集思考を進化させることができました)。

2/4

何を学ぶのか、いつ学ぶのか

1つのヒントは、落合さんの学び遍歴にあります。

落合さんは幼児期に、幅広く個別教育を受けています。幼稚園に通う傍ら、月曜日はピアノの先生が来て、火曜日は東大の院生から算数を教わり、水曜日は公文式の先生が来て、木曜日は画家が来てくれるという生活。

いわば、現代流の貴族教育です。集団教育で世の中の常識も知りつつ、各分野のスペシャリストとともに個別のスキルを育み、五感を刺激してセンスを磨く。そんな絶妙なバランスの教育を受けてきたのです。

その後、高校からは名門の開成高校に通っていますが、大学受験では東大に受かりませんでした(受験勉強の力と、編集思考の力は必ずしも比例しません)。結果、筑波大学の情報学群情報メディア創成学類に進学。

そこで、大量の本を読み漁ったり、出版社でインターンをしたり、動画編集を習ったり、中学生に映画製作を教えたり、コードを書いたり、半田付けをしたり、IoTを研究したり。大学4年時には、天才プログラマー/スーパークリエータ認定をもらっています。

アートからプログラミングから工学まで、その文理を横断する活動領域の広さには驚かされますが、、ダブルメジャーが当たり前の米国の大学では、落合さんみたいな人はそれほど珍しくないのです。

その後、落合さんは東大の学際情報学府で博士号を取得し、シアトルのマイクロソフト・リサーチで働きました。

文理の枠、国境の枠、東洋と西洋の枠、テクノロジーとアートの枠、それらを軽やかに飛び越えながら、根無し草にならず、落合陽一という強烈なアイデンティティーを持っている。そこが彼の傑物たるゆえんです。

こうした落合さんの学び方は、子どもを育てる上でも、大人が学ぶ上でも示唆にあふれています。

「若いときに学ばなかったら、完全に手遅れ」という声は根強いですが、決してそんなことはありません。むしろ「大人になったら手遅れ」という考えこそ日本的なものでしょう。

日本では大学といえば若者だけが通うイメージですが、先進国の多くでは、大人が大学に通うのは珍しくありません。それに今は、大学でなくとも学びの場はいくらでも開かれています。

落合さんには誰もなれませんが、自らの専門にとらわれず多様な学びを得ること自体は、誰にでもできるのです。

<続きは

____________________________2019-10-08_15.41.15

*「NewsPicksアカデミア」では、毎月NewsPicksパブリッシングの書籍が一般販売より早くお手元に届きます。詳しくはをご覧ください。


3/4

【NewsPicksパブリッシング創刊!】

「希望を灯そう」をビジョンに掲げ立ち上がった、NewsPicksパブリッシング。このたび、、(宇田川元一著)(佐々木紀彦著)を2冊同時に刊行いたしました。

____________________________2019-10-04_10.54.28

なぜ、この時代に出版社なのか。読者に、どのような本や読書体験を提供していくのか。もぜひお読みください。


4/4

『編集思考』出版記念イベントのご案内

■10/18(金) 八重洲ブックセンター本店 お申し込みは

■10/28(月) 梅田 蔦屋書店 お申し込みは

■10/30(水) 代官山 T-SITE お申し込みは

■10/31(木) 二子玉川 蔦屋家電 お申し込みは