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日本社会が繰り返す負けパターン

なぜ「編集思考」が今の日本に必要なのか。

そのわけを理解するには、まず歴史を踏まえながら日本を眺める必要があります。

日本の組織には負けパターンがあります。それは、「縦割り病」です。「横串」がうまい創業リーダーが去るやいなや、「縦割り」の官僚が跋扈し、自滅してしまうのです。

ここでいう「縦割り」とは、一言で言えば組織の官僚化、つまり組織本来の目的を見失い、全体よりも自己の利益を優先してしまうことです。「横串」とは逆に、本来の目的の達成のために、今ある形にとらわれずゼロベースで必要なものをつなげ直すことを指します。

創業当初は、大局観のあるリーダーがみなを引っ張り、各人が誇りと緊張感を持って、自らのやるべきことをやる。みなが一体感を持って、自分を超えた何かのために汗を流す。それが巡り巡って自分のためにもなり、みながハッピーになる。

しかし、創業期のリーダーが組織から退くと、「縦割り」型の官僚タイプがのさばり、視野狭窄に陥る。自分の部署の業績、自分の出世、自分の好き嫌いにのめり込んでしまう。しかも、本人には悪気がないだけに手の施しようがない。

こうした無数の「縦割り」の中で、全体を考える人や機能が衰え、「個々はまじめにやっているのに、全体としては支離滅裂」になってしまう。その後組織が競争に敗れ、焼け野原となった跡に、また新たなリーダーが生まれてくる、その繰り返しです。

編集思考はこの「縦割り病」に対する特効薬なのです

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日本の「続かない栄光」と縦割り病

近代日本の歴史は、「縦割り病」の典型と言えます。

まず、明治維新です。積年の恨みを超えて、薩長が手を結ぶ。日本全体のことを考え、無血開城によって政権交代を実現したのは快挙でした。何より、国家の利益に反するとあらば、維新の英雄である西郷隆盛すら切り捨てる。まったく私情に流されません。

1904年に始まった日露戦争では、陸海軍、藩閥の枠を超えて一致団結。世界最強のコサック騎兵とバルチック艦隊を撃破し、日本を勝利に導きました。

我欲を捨てて、天命に命を燃やす。その精神が骨の髄まで染み込んだ人々が、日本を率いていたのです。

しかし、栄光は続きません。伊藤博文、山縣有朋といった明治の元勲が鬼籍に入り、原敬のようなジェネラリスト型のリーダーが暗殺により倒れると、大所高所から俯瞰して、複雑な「連立方程式」を解けるリーダーがいなくなります。

1945年の敗戦を迎えるときには、日本の人材は払底していました。正確には、適切な人材が、適切な地位に就くシステムが壊れてしまっていました。東条英機と近衛文麿はその象徴です。

東条は、学校の成績は優秀で事務処理能力も高く、上司には従順で、部下の面倒見はよい。その一方で、大局観はなく、些事に拘泥し、精神論に傾く。平時ならまだしも、有事にはもっとも害悪となるタイプです。

近衛文麿に至っては、占領軍の一員でカナダの外交官だったハーバート・ノーマンに一刀両断されています。

「淫蕩なくせに陰気くさく、人民を恐れ軽蔑さえしながら世間からやんやの喝采を浴びることをむやみに欲しがる近衛は、病的に自己中心で虚栄心が強い。かれが一貫して仕えてきた大義は己れ自身の野心にほかならない」

大局観を持たず自分優先の判断しかできないリーダーのもと、日本は文字通り焼け野原となってしまいました(一度目の横串→縦割り)。

しかし、そこからまた、新たな希望が生まれます。その筆頭が、敗戦の翌年に生まれた、ソニーです。1946年5月7日、日本橋・白木屋の3階に会社を開いた井深大(当時38歳)は、盛田昭夫(当時25歳)など20人の仲間を、こんなスピーチで鼓舞しました。

「大きな会社がこれから復活してくる。これと同じことをやったのでは勝ち目はない。技術の隙間はいくらでもある。われわれは大会社ではできないことをやり、技術の力でもって祖国復興に役立とう」

井深、盛田の側近として27年間仕えた垰野堯はの中で、井深の“人を愛する心”と盛田の“日本を愛する心”が戦後の復興という意識で一致したところに、2人の大義名分が生まれたと記しています。

井深自身、「ベンチャーを目指す企業には技術や資金よりも思想が必要だ」と喝破しています。 2人とも自分を超えた大義や思想に生きるリーダーだったのです。

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いまこそ求められる新時代のリーダー像

この後、ソニーに続き同年に設立されたホンダなど、日本の企業が次々に世界へ飛び出していきます。

しかし、日本流の失敗パターンにはまるのは企業も同じでした。

ソニーにしろ、ホンダにしろ、パナソニックにしろ、井深、盛田、本田宗一郎、松下幸之助といった創業リーダーを失ってからは、縦割りが跋扈する普通の会社となり、尖ったサービスやプロダクトが生まれなくなりました(二度目の横串→縦割り)。

もちろん、「昔は世の中がまだ複雑ではなかったため、団結しやすかったし、視野の広いリーダーが生まれやすかったのではないか。複雑化した今の時代に、昔の話を持ち出すのは意味がないのではないか」という反論もあるかと思います。

それも一理ありますが、世界を見渡せば、現代でも、高い専門性と広い視野を兼備したリーダーはゴロゴロいます。

ビル・ゲイツは最たるものでしょう。大学でコンピューターサイエンスを学び、その後、経営者として世界一の企業を築き、今はフィランソロピー(企業による社会貢献)の第一人者として、マラリア撲滅など世界のために奮闘しています。

大のつく読書家で、構想力と行動力を備えたゲイツは、理想的なリーダーの一類型です。意識と環境とシステムさえあれば、今なおスケールの大きいリーダーは生まれうるのです。

二度目の縦割りを打破するために日本に必要なもの。それは官僚化した組織に横串で新たな風を通す新時代のリーダーです。

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