前編は

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成長ステージごとのポイント

ーーそういう意味でいえば、チームづくりのコツみたいな公式があるわけではない。100の組織にはそれぞれ100通りのやり方があるかもしれませんね。こういうプロセスを経ていくと結果としてチームが「フォーミング」から「ストーミング」を経て「ノーミング」に行けると。

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長尾 そうですね。「ノーミング」の状態になると、あっという間に「フォーミング」に戻る、ということはないと思います。ものの見方、考え方として「パフォーマンスが下がったということは、一歩前に進んだ」という見方がメンバー間で共有されることもあります。

ーー「ノーミング」の状態に発達すると、それまではグループの状態だったのがチームとして成長したということですね。いいチームになってきたということだと思いますが、ここで大事なことは何ですか。

リーダーは、第3ステージの「ノーミング」になってきたと判断したら、不要な介入や過度な指示、指導をしないことが大事です。メンバーがそれぞれどんな動きをしているのかじっくりと観察することが求められます。

「ノーミング」に発達したチームでは、自分たちのことを自分たちでどうにかする、「自治」が始まります。

自分たちで役割・ルール・目標をつくり始めるので、それらに対して「そんなものはダメだ」と一刀両断したり、「もっと他にすべきことがある」と水を指したりするのではなく、とにかく邪魔をしないことです。

ーー「邪魔をしない」を徹底すれば、あとは自由にやらせていいのですか。

リーダーから見たらまだ満足できない状況もあるかもしれませんが、大事なのはメンバーが自発的・能動的に行動を起こした、という動機を否定しないことです。メンバーが自主的に動き始めますから、好き勝手にやらせる、ということでもなく、ときおり状態や進捗を確認しながら「これを手伝っていい?」と声をかけたり、少しつまずいているメンバーに対して個別のフォローをしたりすることが大事です。

ーーそれがリーダーにとって大事なことなのですね。一方でリーダーが不安になることもあると思いますが、そういうときにはどうすればいいですか。

第3ステージになっているときには、リーダーはそれほど強い不安を感じません。というのも、メンバーを信頼しメンバーから信頼されるからです。「彼らなら大丈夫だ」という確信のようなものが生まれます。もし、「彼らに任せていたらうまくいかないかもしれない」という不安を感じるのであれば、まだ第2ステージにいる、という見立てができると思います。

もし不安になったときは、メンバーに「不安なんだけど、どうしたらいいかな?」と相談すればいいのです。

その後「ノーミング」の状態から第4ステージの「トランスフォーミング」となっていき、チームは達成期を迎えますが、そんなチームもいよいよ解散を迎えます。大きな成果を生み出したとしても、当初の目的を実現し目標を達成できれば、「チームは解散」します。

同じチームメンバーでも、新しい目的や新しい目標が与えられたら、第1ステージの「フォーミング」状態からのスタートです。

とはいえ、この発達段階のフレームワークをチームメンバー全員が知っていれば何が起こるかも想定しやすくなるので、チームの解散を恐れる必要はないわけです。

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マネージャーとリーダーの違い

ーーなるほど。ちなみにこの本(長尾氏の新著『)の中で面白いと思ったのが、マネジメントは依存を生み、ファシリテーターは自律を生むという部分です。マネージャーは、あくまでもマネジメントすることを意識しなければいけないのでしょうか。あるいは、マネージャーは、ファシリテーターに意識をおくほうがいいのでしょうか。

その時々に応じて、状況に応じて、役割を柔軟に変えられるのがいいと思います。今この状況でマネージャーが必要だと思ったらマネージャーをやればいいし、いや、今はリーダーが必要だというときはリーダー役をやればいいと思います。

ーーちなみに、マネージャーとリーダーの違いについて詳しくお伺いしたいと思います。職場でマネージャーになったときに、マネージャーの仕事ができなくて苦しむ人が多いと思いますが、長尾さんのマネージャー論をお話しいただけますか。

マネージャーは、「あらゆる手段を講じて、物ごとをいい感じにおさめることができる役割、人」だと思っています。一方でリーダーは、「やりたいこと」が明確で、「これを成し遂げたい。でも1人じゃできないから助けてほしい」とみんなに言える人です。それが違いです。

マネージャーは「should」で語る人、リーダーは「want」で語る人とよく伝えていますが、マネージャーの役割はビジョンを語り大勢を巻き込むようなアクションを起こす、ということではないと思います。リーダーがビジョンを語り、マネージャーがその理想を形にするためにビジョンを「微分する」ことが役割の違いだと思います。

そういう意味では、リーダーとマネージャーでお互いに役割の違いを認識した上でチームとして仕事ができるといいと思います。

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ーー1人がどちらもできるというのは、なかなか難しいでしょうか。

リーダーとマネージャーは、それぞれに求められる役割が違います。芸人でマネージャーも自分でやっているという人はあまりいないですよね。芸人の仕事は、ステージに立っていいパフォーマンスをすることであり、それがしやすい環境をつくるのがマネージャーの仕事です。

役割が違うのですから、リーダーとマネージャーをいっぺんにやろうとしなくてもいい。いっぺんにしようとすると疲れちゃうかもしれません。もちろん両方いっぺんにやれる人は、存分にやればいいと思います。

私はマネージメントが得意だという人もいるし、反対にマネージメントは苦手だという人もいます。

やりたいことはどんどん自分でやるけれど、ある程度の目処が立った段階で、細かいことは「ちょっとお願いしていい?」と言って、人にお願いして回るのがリーダーという感じでしょうか。

一方「私、特にやりたいことはないけど、あなたがやりたいことがあるんだったら手伝えることがたくさんあるよ」ということに喜びを感じられるのがマネージャーという感じがします。

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共通言語をつくってほしい

ーーでは、プレイングマネージャーについてはいかがでしょう。マネージャーは、みんなを調整するのであんまりプレイしないほうがいいという意見もあると思いますが、それについてはどう思いますか。

何をプレイするかによると思います。部下の成長や学びを阻害してしまうような事柄をマネジメントするのは、組織で成果を上げることが求められる以上、好ましくありませんよね。

部下が成長するために、通過しなきゃいけないことってあると思います。それを全部横取りして自分でやっちゃうというのは、不健全な感じがします。

一方、うまくできないのは分かっているけど、この業務でこの人にこう成長してほしいという明確なメッセージを伝えることができ、「じゃあ一緒にやってみるか」というスタンスで一緒にやれるマネージャーは素敵だなと思います。

少し矛盾しているかもしれませんが、リーダーはそんな状況を見て「そんなことやっていたら時間ないだろう」とイライラしてほしい(笑)。そして、リーダーのそんな反応に対してマネージャーは「ちょっと待って、チームを発達するためには時間が必要なんだ」と言ってほしい。

「あなた1人でやっているんじゃないんだ。チーム全体が成長するためには、今ここでこういう失敗を積み重ねることや、試行錯誤する体験や経験値を積むことが大事なんだ」

という組み合わせが起こると素晴らしいと思います。

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ーーまさに役割分担ですね。

はい。いつまでたってもプレイングマネージャーがプレイしてしまうと後輩が育ちません。そうすると、自分で自分の首を締めてしまいます。

ただただ長い時間をかければいいわけではもちろんありませんが、時間を味方にしてチームを育てることも大事です。

そして、願わくばそういった関係を組織内で生み出すための共通言語をこの本でつくってほしいと思います。

マネージャーが優秀すぎると、メンバーは一斉に優秀なマネージャーに頼り、セルフマネジメント、つまり自律から遠ざかってしまいます。

「自分たちでどうにかしなければ」と思うのは、リーダーの特徴だと思います。

「どうする? リーダーがあんなこと言っているけど誰がやるの?」とメンバーが感じているときに、もしリーダーが「いや、どうしたらいいかは私もわからないから、君たちが中心になって取り組んで欲しい。」

というようなアプローチがあると、マネジメントスキルが組織で一気に上がることがあります。

ーーマネージャーとリーダーという、それぞれ役割が違う人がいたほうがいいかもしれないし、使い分けできる人がいればそれはそれでいいと。

そうです。もし自分がマネージャーだったら、リーダーをやってもらいたい人にこの本を渡してほしいし、もし自分がリーダーだったら、マネージャーになってもらいたい人に渡して一緒に読み、考え方や言語のフレームを一緒につくれると面白いですね。