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法律は「各論」から学べ

ビジネスパーソンが法律に関する本を読むのなら、「総論」ではなく、「各論」から入るのがいいのではないかというのが僕の考えです。というのも仕事柄、法律の本は死ぬほど読んでいますが、「法律全般について基本的な考え方がよくわかる本」というのが、本当に見当たらないんですよね。あったとしても、ものすごく抽象的で難しい本ばかり。

だから「法律とは何か」みたいな本よりは、個別具体的なジャンルや、特定の話題を扱った本を読むのが、法に興味を持ったり、法を理解したりする最短距離ではないかと思います。

水野祐氏

実を言うと僕が弁護士を志したのも、いわば「各論」の本を読んだのがきっかけです。その本とは『CODE』(ローレンス・レッシグ著)。僕は訳者の1人である山形浩生さんの翻訳が好きなので、その名前に惹かれて手に取っただけで、法律の本という意識はありませんでした。

しかしこの本を読んで以来、インターネット文化を法律の面からサポートしたいと思うようになり、それで弁護士になったというわけです。

今回紹介した本の中には、1冊だけ「法律とは何か」を正面から扱った本があります。それが岩波ジュニア新書の『ルールはなぜあるのだろう』です。法律だけでなくルール全般を中高生にもわかりやすく、対話形式で書いている。

「ルールはなぜあるのか」「ルールはどう使えば、より良い人間社会がつくれるのか」について読むたびにアイデアをくれるので、インスパイアされて、最近では法律に関するワークショップをやったりしています。

 

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法律を乗り物として使う

水野祐氏本棚

人間ってもともと怠惰ですけど、ルールがあると「仕方ないからやるか」と頑張れるところがある。法律は僕たちを縛るだけのものではないんです。あえてその枠に物事をはめることで、いい方向に進む乗り物のようなものでもある。

そして法律を乗り物として使うには、法律に詳しくなるというより、法律との「付き合い方」を身につけたほうがいい。何か困ったことが起きたときは弁護士に聞けばいいし、専門家の知恵を借りればいい。

活躍しているクリエイターや起業家は、法律との付き合い方がうまい気がします。彼らはルールを規定のものとして捉えるのではなく、必要があれば変えていき、上手に活用することに意識的な人が多い。

僕自身、何か困ったことが起きてからの対応は弁護士としての仕事の大きな部分ですが、それよりは事前に戦略的なところを並走していけたら、と思っています。

 

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Book List

 大村敦志/著 岩波書店

もしスポーツにルールがなければ、面白さは激減するだろう。では法律を含めた私たちの生活の中のルールは何のためにあるのか。息子と父の対話形式で平易に書かれた法律についての本。著者は東京大学教授で、このほかにも『父と娘の法入門』『法ってどんなもの?』など岩波ジュニア新書を2冊手がけている。

 

 武邑光裕/著 ダイヤモンド社

Google、Apple、Facebook、Amazonを筆頭とするアメリカ西海岸のIT 企業は、これまでネットユーザーの個人情報を利用することで莫大な利益を得てきた。それに待ったをかけたのがEUだ。2018年5月にEUで施行された「一般データ保護規則(GDPR)」とはどんな法律で、どんな変化をもたらすのかを解説。

 

 公共R不動産/編 学芸出版社

不動産仲介の人気サイト「東京R不動産」が行政の所有する物件と民間企業をマッチングさせる。それが「公共R不動産」だ。実は街づくりや建築は規制が強く、法律とは無関係でいられない分野である。公園内に宿泊施設を造ったケースなど、「規制のグレーゾーンをうまく使った事例集」としても読める。

 

 カル・ラウスティアラ、クリストファー・スプリグマン/著 山形浩生、森本正史/訳 みすず書房

クリエイターの権利を守るものである著作権。ところが法学者である著者によれば、レシピやファッションなど著作権で守られていない分野の方が創造性が活発だという。「パクリを認める代わりに使用料を払う」など、経済活性化とクリエイターの権利保護を両立するためのルールを提示している。

 

 キャス・サンスティーン/著 田総恵子/訳 NTT出版

実は法律は新しいものができる一方で、いったんできた法律はなかなかなくならない。著者はオバマ政権で法制度を「仕分け」していた法学者。行動経済学的な手法を用いて、その法律が存在することの効果を測定し、不要な法律をなくしていく。社内のルールや契約書を作るときの参考にもなる1冊。

*本記事は「NewsPicks Magazine Vol.2」からの転載です。