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起業は「実験」のようなもの

――今日は、著書『』『』でおなじみの三戸政和さんと、『』の光本勇介さんをお招きしました。

三戸三戸です。日本創生投資というバイアウトファンドを経営し、中小企業を買って売却するビジネスをしています。

ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)というベンチャーキャピタルに勤めた後に、今のファンドを立ち上げました。資本家としてはもちろん、「0→1」で会社を立ち上げる起業経験もしているので、今日は資本家・起業家両方の視点からお話しできればと思います。

____04A1995_-__________三戸政和/日本創生投資 代表取締役社長

光本 BANK代表の光本です。BANKは今、2つの事業を展開しています。一つは、目の前にあるモノを一瞬で査定し、買い取り・現金化するアプリ「CASH」、もう一つはあと払い専用の旅行代理店アプリ「TRAVEL Now」です。

BANKは一度、DMM.comグループ傘下に入りましたが、現在はMBOを実行し、ふたたび独立した形で運営しています。

またBANKを創業する前に、誰でも簡単にオンラインストアを作れるサービス「STORES.jp」を運営するブラケット(現:ストアーズ・ドット・ジェーピー)を立ち上げました。こちらもZOZOに一度売却した後にMBOをし、今は他の方に経営をお任せしています。

____04A1837_-___________-__________光本 勇介/株式会社バンク 代表取締役兼CEO

――光本さんは著書『実験思考』をタダで売る「実験」をしましたね

光本はい。電子版は無料、本は印刷原価の390円で販売しました。読者には0円から1000万円まで好きな値段をつけてもらい、支払金額によって僕と一緒にお茶や食事をするなど、特典をつけました。

――売り上げが1億円に到達したそうですね。

光本そうなんです。予想以上にたくさん買っていただいたので、先月の平日夜はほとんど毎日、特典のお食事会でした。このままでは僕の体がもたないので、重版はしないでくれとお願いしました(笑)。

――すごい反響ですね。今回のテーマは「資本家マインドセットと起業家マインドセット」です。2つの共通点や違いをお二人に伺いながら、一般的なサラリーマンがそうしたマインドを取り入れる第一歩になる機会にしたいと思います。はじめに、資本家/起業家マインドセットとはどういうものかをお聞かせください。

三戸まず資本家とは、株をもっていることを意味します。そして資本家マインドセットをもつ人とは「究極まで効率化できる人」だと思います。

事業を運営する側にいるサラリーマンは、事業を安定的に運営するために自分の体と時間を使わなくてはいけませんよね。

それに対して株をもつ資本家は、その会社で働いている人たちが事業を回してくれることで、配当や収益を得られます。自分のリソースを使わないので株はいくつも持てるし、そのぶん自分の好きなことができる。

生活のために働くことも大事ですが、人生の時間は限られています。その中で「仕方ないからやる」を可能な限り削ぎ落し、時間を効率的に使っているのが資本家です。

好きなことを、好きな人と、好きなようにやる。そして収益も得るというのが資本家のコンセプトです。

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――光本さん、起業家マインドセットについてお願いします。

光本改めて聞かれると、起業家マインドセットって何でしょうね。今までちゃんと考えたことがなかったので。

三戸起業家もエクイティ(株式)をもつことがベースにあるので、資本家のくくりに起業家も含まれますが、その中で「資本家っぽい生き方」が切り出されるのでしょうね。

起業家と資本家で対比的なのは、自分で事業をやりたいかどうかの点ではないでしょうか。

光本そうですね。事業という「作品」を自分の好きなように作れることが、やはり一番面白いです。

起業は、やってみなければわからないことばかりですし、思い通りには絶対いかない。いわば「実験」のようなものです。でもだからこそ、やってみたほうが面白い。

今までいろんな事業を作って、いっぱい失敗もしました。でも学んだこと、得られたものがたくさんあって、それが楽しくてしょうがない。

答えになっているかどうかわかりませんが、僕はこんなふうに思っています。

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資本家/起業家マインドセットの原体験

――それらのマインドセットは当然、初めから備わっているものではありません。お二人が資本家/起業家マインドになっていった原点は何だったのですか。

三戸ベンチャーキャピタルで働いていたときに、光本さんのような人をいっぱい見てきました。同世代が「IPO(株式公開)しました」「イグジットで70億だった」などというのを聞いて、「これはなんなんや」と思ったんでよすね。

同じように働いていても、こちらは会社員で年収何百万。一方、彼らは「総資産が数百億」など、サラリーマンが“一生”を何回やっても届かないような桁を扱っている。

この差の根源は何かと考えていくと、エクイティを持ち、それをうまく使うことが大事だと気がつきました。

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もともと私は「さぼりたい派」の性格なので、それも資本家的なのかもしれません。実際に、うちのファンドの事業も、2人の社員にほとんどお任せしています。彼らが気持ちよく働けたらそれでいいし、私はときどき進捗確認ができればいい。

すると、会社とは違うところで自分のリソースを割ける。本を書くのもそうですし、このたび、堀江(貴文)さんのロケット会社に取締役として参画することになりました。

こんなふうに、色々なことをいっぱいやれるのが、面白いですね。

光本なるほど、三戸さんとの違いが見えてきました。

経営者どうしのつながりの中で、僕もときどき出資することがあります。個人でおそらく20~30社に出資していますが、あまり楽しくはありません。

なぜ楽しくないかというと、関われないから。僕は事業を自分でやりたいし、自分で判断したいので、出資にあまり興味を見いだせないんです。これはその人のタイプによると思います。

――では、光本さんが起業家マインドセットをもつようになった原体験は何ですか。

光本まだヤフオクなどがない高校生の頃、原宿で大人気だったアパレルブランドの洋服を買って、それを地方の人にネット掲示板を介して転売していました。これがめちゃくちゃ儲かって、高校生ながら月に100万~150万円を稼いでいました。

そのお金で贅沢ができるのもうれしかったんですけど、それ以上に、自分で考えて需要と供給のスポットを見つけ、結果を出せることが楽しかった。そこから、ビジネスの面白さにハマった感じです。

三戸私は、事業を立ち上げて回り始めたら「別に俺がやらなくてもいいか」と飽きちゃうんですが、光本さんは飽きたりしませんか。

光本そうですね。その観点でいうと、僕も新しいものをどんどん作りたくなるタイプです。起業家の中でも「0→1」が得意なタイプと「1→100」が得意なタイプがいますが、僕は「0→1」ですね。

STORES.jpも人に任せているし、飽きるわけではないですけど、どちらかというと目移りしちゃうほうだと自覚しています。

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買ってだめなら売ればいい

――お二人の共通点と相違点が興味深いです。会社を飛び出してステージを変えるのも選択肢の一つですが、サラリーマンでありながら資本家、または起業家マインドセットを身につけて今より一歩踏み出すには、どういうアクションがあると思いますか。

三戸サラリーマンであるなら、資本家のほうが始めやすいと思います。 よく「資本家的な生き方は副業規定に引っかかりませんか」と聞かれますが、その会社で働くわけではないので副業にはあたりません。

何も、社員が何十人、何百人もいる会社を買えというわけではありません。極端にいえば、もし会社を買うにしても、近所のたばこ屋さんの延長のような地元の小さな企業をお勧めしています。

その会社の事業は以前からずっと回っているので、引き続き温かく見守ることは自分がフルタイムで働いていてもできるはずです。株主は、経営者ではありませんから。

オプションとして、もし買った会社の業界に自分の知見や人脈があるなら、時間と労力の範囲内で、効率化したり人を紹介したりすればいいと思います。

――ただやはり、その会社への携わり始めると、思った以上に時間を使うのではないかとためらってしまいそうです。

____04A1953モデレーター:渡辺将基氏(新R25編集長)

三戸私自身も今、自分のファンドで、5~6社の会社の株式を持っていますが、それらの会社のために割く時間は1日に1時間もないくらいです。つまり、その気になればどこかにフルタイムで勤めることもできる。

極端な例を挙げると、孫正義さんは何十社、何百社の株を持っています。ということは自分も1社くらいは持てるんじゃないか、と逆算できる。「できるかできないか」の二元論より、濃淡で考えてみてください。

それに、買ってみて「あ、回らないな」と思ったら売ればいい。それくらいライトに考えてもいいと思いますよ。

――では会社を買ったら、何を一番大切にすればいいでしょうか。

三戸その会社で働く人が、いかに気持ちよく働けるかを考えることです。組織は人でできていますから、従業員が気持ちよく働いてくれたら万事OKです。

――そういわれると、少しハードルが下がってきました。光本さんから見て、サラリーマンでも「この人は、起業家マインドがあるな」という人はいたりしますか。

光本もちろんいますし、とくに今日ここに来ている人は、起業を考える人も多いと思います。えらそうに聞こえるかもしれませんが、じゃあなんで起業しないのかな、というのが僕の考えです。

やったことがない、何から始めていいかわからない、と怖い気持ちはわかります。でも今はいろんな情報が転がっていて、リスクなんて本当に小さい。

うまくいけばベストですが、うまくいかなくても得られるものがいっぱいある。むしろ僕は「成功より成長」だと思っています。三戸さんと同じで、だめだと思えば会社員に戻ればいいんですからね。

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第2回は