第1回は

第2回は

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M&Aは株式交換で

田中ユーグレナはこれまで、M&Aの手法を使いながら大きく成長してきました。買収先の会社とカルチャーの融合が必要になると思うんですが、そこで苦労した点や工夫した点を教えてください。

永田経営者はそれぞれアクが強いですが、働いている社員はみな良い 人たちなので、めちゃくちゃ大変だというほどではありません。

私たちがM&Aをするとき、先方には常に株式交換を提案します。キャッシュで買収して自分たちの経営者を送り込むパターンもありますが、それとは正反対です。

なぜかというと、オーナーさんにはユーグレナの株を持ってもらい、継続的にコミットメントしてほしいからです。オーナーさんも含め、その組織全体を買いたいと思っているので。

____P1A8547永田暁彦/株式会社ユーグレナ 取締役副社長

また株式交換は、先方にユーグレナを信頼してもらい、互いに将来性を信じ合わないとできないことです。入口の時点で先方のスタンスを判断できることも、株式交換の手法をとるメリットです。

必要なときに、株式交換やエクイティファイナンスを効果的に行うためにも、普段からきちんと株価設計をしなければいけないのです。

田中株式といえば、ユーグレナの株主構成は、機関投資家(顧客から拠出された資金を運用・管理する法人投資家)よりも個人投資家向けのIR活動に、とても力を入れていますね。

永田はい。日本の上場企業の中で、かなり個人投資家に力を入れた自信があります。

田中それはなぜですか。時価総額の関係で、機関投資家がそう簡単に買ってくれないという事情(多くの機関投資家は、時価総額が上位500社=時価総額2,000億円以上の会社に投資をするのが原則)はあるものの、機関投資家を多くしたほうが、株が長期保有される確率が上がり、安定すると思うのですが。

____P1A8586田中慎一/株式会社インテグリティ 代表取締役

永田上場するときにも、先輩CFOから「個人投資家はやめて、機関投資家だけにしなさい」と言われました。それを聞いてなぜだろう?と不思議でした。

私たちは絶対に、個人投資家に力を入れるべきだと思っていました。というのも、個人向けの商品を作って売っているのだし、社長の出雲のキャラクターは、機関投資家より個人に愛されるはずだからです。

それに、個人投資家はすぐに株を売ると思われがちですが、そうではない個人もたくさんいるはずだと仮説を立てました。数字で語るのではなく、人間性で語ろうと。実際に、お会いした個人投資家は、かなりの確率で株を買ってくれました。

その証拠に現在、ユーグレナの長期保有株のうち60%は個人投資家で、これは異常な値だといえます。

一方で、株価が大きく上下したときに、狼狽して売ってしまうのは個人が多いのも事実なので、冷静に判断してくれる機関投資家は欠かせません。機関投資家と個人投資家の組み合わせで、個人の比率が他社より高いだけです。

たしかに相手が機関投資家のほうが、コミュニケーションが取りやすくて楽です。論理的に話ができるので、頭がよくなったような気にもなります。ただ会社としては、アナリストから評価される以上に、ファンを作るほうが大事ですからね。

先を予測する世界なので常識が語られがちですが、それにとらわれずに「自分たちの会社がどうあるべきなのか」の視点で、株主構成やファイナンス手法も考えなければいけないと思います。

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戦略の「見せ方」の使い分け

田中「自分たちがどうありたいか」はもっとも基本的で、そして大事なことですね。

見せる(魅せる)戦略として、上場前にANAやJXと提携し、上場後にそれを打ち出すことで、ミドリムシでジェット機を飛ばす実現可能性を示し、株価を上げたお話がありました。

ただ、ユーグレナを詳しく知らない投資家から見ると「マーケット的にウケる目的で、表面的にそういう形式を取り繕ったのではないか」という誤解もあったと思うのですが。

永田戦略には、いくつか種類があります。ベンチャーキャピタルや機関投資家へ示す戦略には、「これをこうやって実現すれば、いくら儲かります」というキャッシュフローを語ることが絶対に必要です。

ただ個人投資家に対しては、もちろんキャッシュフローも大切なのですが、それ以上に社会的なインパクトや、ミドリムシで飛行機が飛んだらどうなるかと想像力をかき立てるほうが、意味があるかもしれません。

____P1A8507

田中見せる相手によって、語り口が変わると。

永田はい。しかし、その中身である「実行する戦略」は、相手が誰であろうと変わりません。

日本で石油を精製する会社は4社しかありませんし、LCCが増えたとはいえ、世界中に国際線を頻繁に飛ばせる航空会社は2社しかない状況です。そうした、新規参入がしにくい業界の人たちが仲間にいることは、たいへんなアドバンテージです。

そういう意味でANAやJXと組めたことは、見せる(魅せる)戦略、実行する戦略の両方において、非常に重要なことでした。

田中なるほど。ANAにしてもJXにしても、「ミドリムシで飛行機を飛ばします」と言ったときの、最初の反応はいかがでしたか。はじめから好感触だったのか、「え?何を言ってるの?」というところから始まって、時間をかけて理解してもらったのか。

永田「ミドリムシで飛行機を飛ばす」というのは、メディア向けの表現なんです。微細藻類で燃料をつくる取り組みは、実は世界のあちこちで立ち上がり始めているので、ビジネスパートナーに向けては「その先端企業として、油を供給します」というスタンスで提案するので、とくに驚かれませんでした。

そこも、誰に何をどの切り口で話すかで、キャッチーさを追いたいときと、実のある話をするときの違いで、名と実を分けて使っています。

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会社がうまくいかない時の対処法

田中では会場の皆さんからの質問を受けつけましょう。

質問者1戦略立案と事業推進について、とくに興味深く聞いていました。戦略を立てるときは、どのようなメンバーでどのように議論して決めるのですか。それとも、出雲さんと永田さんの2人で決めているのでしょうか。また実行の際はどうしていますか。

____P1A8566

永田簡単にいうと、4レイヤー(層)あります。まず第1レイヤーは、出雲の夢、わがままです。私はそれを叶えてあげたいと思っています。

そして第2レイヤーは私です。出雲が描いた夢を大局的に見て、どういうパートナーとどういうビジネスで、どういうキャッシュフローであれば実現できるかというのをすべて一人で考えます。

第3レイヤーは実現のためのプランニングで、これは執行役員クラスで分析します。この事業に100億円必要なら、どのような資金調達をするのか、土地が必要ならどのように用地買収をするか、という具合です。

最後に第4レイヤーは、部長や課長クラスが実行における具体的なアクションプランを考える感じですね。

このようなレイヤーで考えています。

田中出雲さんのアイデアを起点に、永田さんが脚本を書くんですね。

永田出雲がわがままを言わなくなると、会社としてもどこか調子が出なくなってしまうんです。

田中悪い意味で、行儀よくなってしまうんですね。角が取れて丸くなったというか。

永田ええ。それがつい昨年、2018年にあったのですが、そこから半年間は「出雲充 野生化プロジェクト」を敢行しました。

田中社内の公式プロジェクトですか?

永田いえ、出雲と私、2人だけのプロジェクトです(笑)。何をしたかというと、半年間、出雲が言ったことにすべてイエスと言い続けました。

____P1A8550

出雲がいいと言えば採用内定書を書いたり、あの会社を仲間にしたいと言われれば、「わかりました」と取りかかったりしていました。

そうして出雲の想像力や描く未来を紡ぎ出すようにすることが、ユーグレナの最上位レイヤーです。プロジェクトが功を奏し、出雲のわがままがようやく戻ってきました(笑)。

質問者2ユーグレナは、ミドリムシをベースにした会社ですね。もし今後、ミドリムシよりエネルギー効率のいい生物や、めちゃくちゃ健康にいい生物が見つかった場合、ユーグレナはどうするのでしょうか。

永田素晴らしい質問です。それこそが、CEOとCFOの絶対的な違いです。

出雲は、100回口を開けば100回とも「ミドリムシ」と言うような人間です。しかし実は、食品事業の半分以上はミドリムシ以外のものを作っています。そして、ユーグレナは食品会社と思われがちですが、売り上げの半分は化粧品です。さらに、今年供給する燃料のうち、半分は廃食油なんです。

田中そうなんですか?

永田そこは会社の経営を合理的に考え、CFOの私が調整しています。

一方で、出雲が「ミドリムシ」と言い続けることも、とても大切なんです。最初は、ミドリムシで燃料を作るなんて無理だとあらゆる人に言われていたのに、出雲が諦めなかったことでゴールに近づきつつある。

「負けないゲーム」とは「止めないゲーム」で、諦めないことは、時として論理的な計算を超えることがあります。

こうした「止めない力」と「合理性」をバランスよく併せもつことが大事です。出雲が唯一性を追い、私が合理性を追うことで、会社としての強みが出ているのだと自負しています。

____P1A8536