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少数精鋭で世界を目指す

赤川 「オワコンとこれから」の前に、組織としてのミラティブについてお話しします。

ミラティブは2018年の設立で、社員は24人(2019年2月末現在)。組織としての理想としているのは、アメリカのWhatsAppです。

WhatsAppは、世界中で利用されているメッセージアプリで、ユーザー数は10億人超とLINEを圧倒的に上回ります。

しかし、運営するWhatsApp社のメンバーはFacebookの買収時にわずか40人ほど。この人数で10億人が使うサービスを作れるのは、インターネット時代だからこそ。20年前ではあり得なかったことです。

同じようにミラティブも、少数精鋭で世界を目指しています。一方で、正社員と同数以上のメンバーが、副業・兼業メンバーとして働いてくれています。

また、われわれは「ロジカルなんだけれど、エモい会社」を目指しています。

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「エモい」は、「感情が揺さぶられる」「心が動かされた」というときに最近よく使われる言葉です。

コミュニケーション空間をつくる会社ですから、理屈よりも感情や感覚を優先して考えるほうが、サービスに沿うという考えで組織を運営しています。

社内では月に1度「プレミアム・エモイデー」という全体会議を開き、事業戦略の共有に加えて、各自が仕事だけでなくプライベートも含めて最近あった「エモい話」をすることで、メンバー同士の感情や感覚を共有します。

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組織の「オワコンとこれから」

ミラティブが、DeNAの社内ベンチャーから会社として独立して、まもなく1年になります。

DeNA時代も執行役員として経営に関わっていたとはいえ、一から組織をつくるうえで、たくさんの気づきがありました。それらを、僕が思う「オワコンの組織と、これからの組織」としてまとめたのが、これからお話しする内容です。

はじめに言っておきたいのですが、多くの人に伝わりやすいように、あえて「オワコン→これから」というキャッチーな言葉を使いました。

ですから、特定の組織や個人を貶めたり、批判したりするものではありません。むしろ、その多くが自戒を込めたものであることをご理解ください。

まず、「オワコン→これから」という変化が生まれたことに、スマートフォンの登場が大きく影響していると考えます。スマホの登場で、人が1日に持てる情報の量や他者との距離感が、ガラリと変わりました。

テクノロジーによって人間がエンパワーメントされた世界で、オワコンになるのは何かという視点でお話しします。

1つ目として挙げたいオワコンは、ロジカルシンキング(論理的思考)です。

ロジカルシンキングが不要になったわけではありません。しかしロジックは、見えているもの、わかっていることを考えるための手法です。

そもそも、見えないものがあまりに増えた現代においては、ロジックはあくまで前提です。その先にある意志や「自分はこう思う」といった主観、いわゆる「エモさ」こそが、進むべき方向性を示す唯一の道しるべになるのではないでしょうか。

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僕もDeNA時代は「ロジカルシンキング講座」の講師を務めたりしましたが、ある事象をロジックで判断する手法は、ゆくゆくはAIのほうが得意になる領域です。

2つ目ですが、性悪説経営はオワコンです。会社にあるルールの多くは、誰かが悪いことをするかもしれないという前提で作られています。しかし組織の運営という観点では、これはきわめて効率が悪い。

例えば僕がこの世で一番嫌いだった仕事が、交通費申請です。「なぜ俺は、領収証を糊で貼りつけているんだろう」と、細かい作業に時間をかけるのがもったいなくて仕方なかった。

本来は性善説で経営したほうが、コストは安く済むのです。それを体現した組織にしようと、例えばミラティブでは営業社員に2万円分をチャージしたSuicaを渡しています。それで自由に動いてもらい、足りなくなればまたチャージする方式です。

「その電子マネーを使って、社員がタクシーで家に帰ったらどうするんですか?」とよく聞かれますが、そんなせこいことは、しないはずです。……と、社員を信じたい気持ちも、もちろんあります。

でもそれ以上に今は、経営者間や業界間で人材の評価が簡単に行き来しますし、すべてにログがつく時代です。悪いことをするほうが損な世の中になっています。

ちょっとした3000円を浮かせるより、周囲の信頼を失うほうが怖いことは、優秀な人ほどよくわかっていると思います。

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僕はいつも「騙されるまで性善説。騙されても性善説」と言っています。

性善説経営を続けていれば、おそらく、いつか何かしら起こるでしょう。不祥事が1つ起こると、組織はそこからルールを徹底してしまいがちです。

しかしそれでは思考がどんどん固くなってしまう。「騙されても性善説」と内外に発信することで、メンバーと会社が互いにリテラシーをもって性善説経営をせざるを得ないようにしています。

3つ目として、規則で動くチームは古いと感じています。では何で動くのかといえば、これからは美徳で動くチームです。

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先ほどの性善説経営と近いのですが、「ルールがあるからこうします」という状況にしか対応できない組織は、もろいと思うんです。

なぜかというと、規則があると、規則の範囲でしかものごとが進まない。それは人の納得感や、能力が最大化された状態と、必ずしも一致するわけではないからです。また、この変化の時代に事前にあらゆる事象を想定しておくのは不可能です。

それよりも「自分たちは何を目指しているのか」「どういうものを良しとするのか」という美徳をベースにして組織づくりをしたほうが、指示がなくても意思決定の質がそろい、強いチームになるのです。

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35歳で「おじいちゃん」

次に、情報格差でマネジメントをすることもオワコンだと思います。人類の歴史を振り返ると、国家統制や軍隊などの組織運営はほとんど情報格差で行われてきたことがわかります。

自分しか知らない情報を持っているから、相手に対して優位に立てるのですね。しかし今はインターネットによって、あらゆる情報が「誰でも調べればわかる」時代です。

例えば給与査定の面接で、今までなら、人事は給与を上げないための色んな理由を並べ立てていたかもしれません。でも現在は、自分の市場価値がどれくらいなのか、ちょっと調べればわかります。

これからは、相手がそうした情報を持っている前提で「それでもうちの会社を選んでもらうには」と考えてマネジメントしなければ、人はついてきません。

むしろマネジメントですらなく、個人のやりたいことをサポートするような「エンパワーメント」であったほうがいいと、僕たちは考えています。

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5つ目は、今言ったことにも通じるのですが、相手に対してマウントポジションを取ってしまう(マウンティングする)ことは、本当にオワコンだなと痛感します。

これは自戒を込めて言うのですが、年齢を重ねて経験が増えてくると「俺はすごい」と言いたくなるのが人間の性(さが)です。でも、裸の王様になってしまうと学べない。

これだけ変化の速い時代だと、学べない奴が一番弱い。どんどん自分が矮小化しますから、いかに若者に教えを請い、彼らに頼るかを日々意識しています。

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そして、若い人がこちらに正直にものを言ってくれるかどうかは、心理的安全性によります。若い人に対して、「自分の考えてることを話していいんだ」という環境を作り続けることです。

ミラティブでいえば、若者の意見を中心にサービスを作った方がうまくいきます。だって、20代の気持ちがわかるのは、30代より絶対に20代ですから。

僕は35歳ですが、会社では「おじいちゃん」呼ばわりされていまして、若いスタッフに「また健忘症ですか」なんて言われています(笑)。それくらいの距離感のほうが、自由にいろんなアイデアが出てくると感じています。

また、あらゆるものをコントロールできるという感覚も危険です。経営者は全能感に陥りがちですが、経営をして経験が増えるほど、世界はまだまだ広いと知り、コントロールするのは無理だと思うようになりました。

ですから僕たちが今後やるべきことは「秩序立てて混沌をコントロールしようとすること」ではなく、「混沌のアライン」だと思っています。

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まず、カオス(=混沌)状態で高いエネルギーが渦巻いていないと、新しいものは生まれないし、ものごとが前に進まないので、カオスはむしろ歓迎しています。

アラインとは整理をすることですが、そのエネルギーが分散してしまわないように、整理して道筋・ベクトルをつけるのです。

あとはエネルギーに任せれば勝手に前へ進んでいくような状況を目指す。そちらのほうが、すべてを秩序立ててコントロールするよりずっと現実的ですし、僕たちが目指す組織像にずっと近いのです。

※第3回目以降はをご覧ください。