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今やメジャーな「ゲーム実況」

赤川 ミラティブの赤川隼一です。前職のDeNAではゲームやコミュニティ、また執行役員として経営にも関わってきました。

ミラティブは2015年にDeNAの社内ベンチャーとして立ち上げた事業ですが、ベンチャーキャピタルから資金調達をし、僕が買い取る形で2018年にDeNAから独立しました。

われわれは、社名と同じ「Mirrativ」のサービス名で、スマートフォンのゲームを生配信できるゲーム実況アプリを提供しています。

これは、スマホゲームをプレイしているときに、画面上からミラティブボタンをタップすると、すぐに画面がリアルタイムで共有され、ゲーム実況が始まる仕組みです。

これまでのゲーム実況にはパソコンが必要で、機材の設定もしなければいけませんでした。それを僕たちは日本で初めて、スマホ1台で、しかもわずか数タップでできるようにしました。

その手軽さが受け入れられ、おかげさまでスマホゲーム実況の領域では、シェア1位を獲得しています。

ところで皆さんの中で、YouTubeなどの動画でゲーム実況を見たことがある人は、どれくらいいらっしゃいますか。

(多数手が上がる)

では、日常的に見る人は?

(挙手数はパラパラ)

だいぶ減りましたね。では、ご自身でやったことがある人はいますか。

(手を挙げたのは1人)

お一人ですね、ありがとうございます。

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実はYouTubeの全再生のうち、約15~20%がゲーム実況だと言われます。ですからもう、オタク向けではなくマス向けのコンテンツになりつつあるんです。

しかし、皆さんに手を挙げてもらった結果からもわかるように、見る人が多いわりに、ゲーム実況を「する人」はまだ極端に少ないのが実情です。その大きな理由の1つは、先に述べた機材や設定などの面倒くささです。

だからこそ、「ヒカキンがやっているから自分も真似したいな」という気持ちをスマホだけで叶うようにしたことが、世間のニーズをとらえたのだと思います。

その証拠に、ミラティブではユーザーの約20%が自身でゲーム実況をしています。YouTubeの全ユーザー(視聴者)に対するユーチューバー(YouTuber)の割合はおそらく0.1%ほどでしょうから、驚異的な数字と言っていいでしょう。

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ゲーム実況に眠る可能性

ミラティブのサービスは、僕が子どもの頃に、友達の家で「ドラゴンクエスト」をしていた経験がモデルになっています。

ドラクエって、1人用のゲームですよね。それなのに、ひとり自宅で黙々と画面に向かうより、友達の家でわいわい言いながらプレイすることのほうが、なぜか多かった。

じゃあ、プレイをしていない子がずっと画面に張りついているかというと、そうではない。後ろで漫画を読んでいるんだけど、ボスが出てきたときだけ「おっ、ボスじゃん」と食いついて「この呪文撃て!」なんて言うんですね。そしてボスの場面が終わったら、また漫画に戻る。

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そうした「お茶の間」のような、出入り自由でゆるやかな空間をスマートフォン上にも再現するのが、ミラティブのコンセプトです。ですからメディアではなく、コミュニケーションサービスを作る意識でやっています。

特にSNSが普及した現代は、人は1つの出来事を「共有する」ことで、楽しみが増すという感覚を持つようになりました。

例えば、多くのゲーム内に「10連ガチャ」というイベントがありますが、ひとりで淡々とガチャを引くより、それを配信してギャラリーから「うぉー!当たった!」「クソワロタwww」と反応があったほうが、楽しいじゃないですか。

そういうソーシャル感覚をとらえ、「ひとりじゃないスマホライフを」を合言葉にサービスを展開しています。

とはいえ、ゲーム実況にどれほど可能性があるのか、不思議に思う方も多いかもしれません。

スマートフォンゲームだけで今、1兆円の市場があります。しかしマーケットは大きくなるにつれ、どんどんレッドオーシャン化しています。

そうなると、「いかに新規ユーザーを獲得するか」から「今いるユーザーに、いかにゲームを長く楽しんでもらえるか」に、ゲーム会社の勝負ポイントは変わりつつあります。

そのときに、あるユーザーの熱量を、違うユーザーに伝える役割を果たす「ゲーム実況」が、ゲーム熱の増幅装置として極めて重要になってきています。実際に、ゲーム実況に触れると1人あたりのプレイ時間も長くなります。

ゲーム会社にとっては、自社コストをかけずに広告を出せるようなものです。そのメリットがあるから、ゲーム会社も積極的にミラティブを導入してくださっています。

ゲーム実況は、ゲームユーザーにとってもゲーム会社にとってもわれわれにとっても、三方でウィンウィンの関係を築けるツールなんです。

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そもそも遊びやエンターテインメントというのは、「そのもの以外」の拡張性が大きいものだと、僕は認識しています。

ゲーム実況だとピンとこないかもしれませんが、プロ野球で考えてみてください。プロ野球を楽しむ全ユーザーの99%は、見るだけだと思うのです。実際にプロ野球選手としてプレイに関わる選手やチーム関係者は、1%以下ですね。

野球場に行く目的が、極端に言えば野球そのものではなくて、「ビールを飲むこと」という人も少なくないでしょう。他にも、テレビ中継やグッズ販売、バッティングセンターというように「周辺市場」がある。

ゲームもそれと同じで、今まではテクノロジーの都合で「プレイする」という行為がほぼすべてでしたが、これからはプレイを「見る」構造や、周辺の市場がどんどん生まれてくるはずです。

究極的には、人がスマートフォンを触っている時間はすべて、誰かとコミュニケーションをするハブになり得ます。だからこそ、ここに無限の可能性が眠っていると僕たちは考えています。

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世界は「アバター経済圏」へ

ゲーム画面上では、自分を表すキャラクター、すなわち「アバター」を設定するのですが、このアバターが今後の大きなポイントになると睨んでいます。

2017年末あたりから、YouTuberの中でも、自分自身ではなくバーチャルのキャラクターを使ってコンテンツを発信するバーチャルYouTuber、いわゆる「VTuber」が出てきました。

皆さん、「バ美肉(ばびにく)おじさん」という言葉を聞いたことはありますか。

「バーチャルの美少女を受肉したおじさん」を略したネット用語なんですが、YouTubeでしゃべっている美女アバターにはボイスチェンジャーがかかっていて、見た目は女の子、声も女の子、中身は完全におじさん、という地獄のようなコンテンツです(笑)。

そのおかしさが逆に受けて、去年の夏ごろから流行りだしたワードですが、実はこれは、人間の欲求を表したものだと思うのです。

ふだん人間は、身体というリアルのアバターに縛られ、「どこどこ会社の何々さん」といった肩書やキャリアに縛られています。しかしテクノロジーが進化するこれからの時代は、バーチャル空間がそれらを解放し、その人の、ふだんとは違う才能を開花させる役割を果たすのではないでしょうか。

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日本発のVTuberは、いかにも日本的だと感じます。そもそも、物に魂が宿るという考え方が日本っぽい。そして「ニコニコ動画」や「初音ミク」を生み出してきたこれまでの流れ。

しかし、自分以外の何者かになりたいという変身願望は、国や地域を問わず人間の根源的な欲求の1つです。

その願望をテクノロジーでエンパワーメントすれば、10年後、20年後には、人が自分とは違う人格をもって発信することが、スタンダードになると予測しています。

そこでミラティブでは、誰でもVTuberのようにアバターで生配信ができる機能「エモモ」を、2018年秋にアプリ内に加えました。

VTuberの出現、VRやARが普及する世界の流れは、ミラティブのサービスと絶妙にマッチしています。であれば、この日本発の「アバター経済圏」に本気で注力して世界に打って出たい。

一人ひとりがアバターをもって他者とコミュニケーションを取ることで、普段とは違う自分を出せる空間を作りたい。次のコミュニケーション・ビッグウェーブを僕たちが作るんだという意気込みで、2019年はさらに突き抜けたいと思っています。

ラッキーなのは、こうしたことに取り組む競合がまだ世界にいないことです。アメリカ人の友人には「わけがわからない、クレイジーだ」と言われますが、褒め言葉として受け取っています。

なぜなら、Facebookも初めは周りに「わけわかんない」と言われていたからです。

は明日掲載します。